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[記事公開日]2020/07/29

北村晃寿教授が2020年度日本第四紀学会学術賞を受賞

理学部地球科学科の北村晃寿教授が2020年度日本第四紀学会学術賞を受賞しました。
受賞件名及び受賞理由は次のとおりです。

 

受賞件名:

「 貝化石・有孔虫化石の複合群集解析による日本本島の島嶼化過程および東海地震の履歴の研究」

 

受賞理由:
北村晃寿会員は、第四系の貝化石と有孔虫化石の複合解析による環境復元から、日本本島の第四紀における島嶼化過程や完新世における東海地震の履歴に関する研究成果を挙げている。
北村会員は、石川県金沢市の下部更新統である大桑層産の貝化石群集と浮遊性有孔虫群集の層位分布の詳細な分析から、両分類群の複合解析により、間氷期ごとに対馬海流が日本海に流入するようになったのは酸素同位 体ステージ59(1.7Ma)であること、日本海中層(深度約200m) は1.46~1.30Maの間氷期が第四紀の中で最も温暖であり、その後段階的に寒冷化したこと、その原因は東シナ海沿岸水の影響低下に伴う日本海固有水の生産量増加にあること、さらに3.5~1.7Maには対馬海流が4度流入したことなどの日本本島の島嶼化の過程を明らかにした。これらの成果は東アジアにおける動物群の交流史や植物群の分布の研究に大きく貢献している。
また候補者は、東日本大震災後、静岡県内の完新世堆積物を用いて古津波・古地震研究を詳細な年代測定に 基づき進めてきた。1854年安政東海地震の津波石の発見、御前崎における隆起貝層の発見と1361年正平(康安)地震で駿河トラフが破壊されたこと、西暦 400年頃に南海トラフ東部から駿河トラフの破壊で地震が起きたこと、過去4千年間の地質記録に発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波であるレベル2津波の痕跡がないことを解明した。これら一連の研究成果は、大規模地震特別措置法の対象である東海地震の実証的研究であり、科学的成果に加えて社会的貢献が大きい。
また、「静岡の大規模自然災害の科学」を上梓するなど、第四紀学から地域防災に貢献している。
このように貝化石・有孔虫化石の複合群集解析による日本本島の島嶼化過程および東海地震の履歴における北村会員の業績は、第四紀学と第四紀学会の発展に多大な貢献をしており、日本第四紀学会学術賞にふさわしいと判断する。