静岡大学理学部物理学科

卒業生からのメッセージ

所属・職は寄稿当時のものです。

矢田 雅哉
2008年3月物理学科卒業,2010年3月理学研究科物理学専攻修了
韓国 Institute for Basic Science 研究員
  • 私は静岡大学理学部を卒業後に修士号も静岡大学で習得しました。 その後は博士号をKEKで取得して以後研究者として生活しており、現在は海外の研究所で素粒子物理学の研究をしています。 専門は理論物理学のうちの超弦理論と呼ばれる分野で、素粒子を1次元のひもの振動と捉えて世界の構築を探ることをします。 素粒子という小さな世界だけでなく宇宙や次元の成り立ちなどにも深く関係しており、とてもエキサイティングな研究分野だと感じています。 学部4年生の時に素粒子物理学の研究室で、素粒子物理学の基礎となる場の理論や現在の専門である超弦理論を学びました。 静岡大学は他の大学に比べて少しのんびりしているところがありますが、その分自分が納得できるまで1つの事を学ぶことができる時間があると思います。 自分のペースで勉強がしたい人、周りを気にせずに何かに没頭したい人には静岡大学はうってつけです。



伊藤 哲
1998年3月物理学科卒業,2000年3月大学院博士前期課程物理学専攻修了,
2003年3月大学院博士後期課程物質科学専攻修了
静岡大学電子工学研究所ナノビジョン研究部門准教授
  • 現在は出身地浜松にある母校の静岡大学浜松キャンパスで研究に取り組んでいます. 静岡大の理学部を卒業後,企業の研究所,私立大学,静岡大工学部と複数の研究機関を 渡り歩いたおかげで,それぞれの特徴が良く見えてきたと思います. 静岡大学理学部は本当に好きなことが,他の束縛を受けることなく自由に行えるところだと思います. 理学部以外にも大学には色々な人たちがいると思います.様々な考えを持つ人たちとのふれあいも 楽しみつつ,物理学科で学問に没頭できる喜びを味わってみてください.



江尻 省
1997年3月物理学科卒業
情報システム研究機構 国立極地研究所助教
  • 静岡大学では色々な出会いがありましたが、現在の私の専門である「超高層大気科学」と出会ったのも 静岡大学でした。4回生で受講した集中講義の一つがこれだったのですが、講義の中で紹介された 南極観測風景は衝撃的で、自然と相対するというのは、なんと過酷で魅惑的なものか、 と非常に感銘を受けたことを覚えています。今私は、この南極観測事業に従事しています。 極域の超高層大気、特に上空 100 km 付近の地球と宇宙の境目で引き起こされる 様々な自然現象の観測を通して、地球と宇宙のエネルギーや物質の交換・輸送を研究するべく、 レーザーレーダー(Lidar)を開発中で、近い将来、これを昭和基地に設置して越冬観測を行う予定です。 地球上だけでなく宇宙にだって、行けない時代ではありません。行ってやりたいことがあるなら、 本気で目指してみてもいいんじゃないでしょうか?



手塚 功司
2004年3月物理学科卒業、2006年3月大学院博士前期課程物理学専攻修了
ローム浜松㈱
  • 私は大学院卒業後、半導体デバイスメーカーに就職しました。現在、プロセスエンジニアとして 日々を送っています。半導体デバイスは動作速度を上げるため、最小GATE寸法をより短く GATE酸化膜をより薄くする等の微細化が日進月歩している中で如何に生産ラインの工程を安定させ 品質向上させるか、という事がプロセスエンジニアのテーマとなります。  私は大学院で希土類化合物(強相関電子系の物理)の研究に取り組んでいましたが、 工学色の強い馴染みの無かった分野で仕事に従事できているのは研究活動を通して得た知識・経験、 特にその考え方を学んだ事が大きいと考えます。すなわち問題点を見いだし、メカニズムを想定し、 実験によって検証する。そして結果を考察し対策を打つ、あるいは次の問題点を見つける。 どの分野にでも共通する考え方だと思います。静岡大学で学べて良かったです。



生子 貴之
2005年3月物理学科卒業,2007年3月大学院博士前期課程物理学専攻修了
関西航空地方気象台・広島空港出張所
  • 高気圧に覆われて穏やかな晴れた日に空を見ると、ぽつんと綿菓子のような白い雲が漂っています。 その雲は時々灰色を呈しているときがあります。なぜだろう。自然には、少し気にして見ると、 そんな素朴な疑問がたくさん潜んでいます。私は大学院を卒業後、気象庁に就職しました。 就職当初は気象の事についてほとんど無知でした。けれども仕事では、 大学で学んだ物理学の知識(力学、熱力学、数学、電磁気学など)を活かせる場面が多々ありました。 なぜなら気象学には、物理学と共通している部分が多くあったためです。 しかし、大学で学んできた事でもっとも有効な事は、知識ではありません。 疑問から答えにつなぐ、簡潔なプロセスを構築するスキルです。 これはどのような職業においても、知恵という形で役に立つと思います。



前島 康光
2003年3月物理学科卒業
名古屋大学 地球水循環研究センター 気象学研究室 研究員
  • 日々の天気をもたらす地球大気の流れは非常に複雑なものですが、一つ一つを見てい くと実は意外な共通性が潜んでいることがあります。私はこのような流れの基本的な メカニズムを調べることによって、気象の素過程を理解することを目指しています。 気象の研究にとって物理学は重要な解析ツールであり、物理的思考は混沌とした地球 大気に一筋の道を開いてくれます。静岡大学で学んだ物理学は大きな力となって私の 研究を後押ししてくれています。



鈴木 啓永
1997年3月物理学科卒業、1999年3月修士課程物理学専攻修了
日本電極㈱
  • 私は現在、静岡県蒲原町にありますカーボンメーカー、日本電極㈱に勤務しております。 日本電極では高炉用カーボンブロック、アルミニウム電解精錬用カソードカーボン等の カーボン製品を主に製造しております。私は現在、新技術によるカーボン材料の高レベルでの 黒鉛化を目指した研究を日夜重ねているところです。試験のために徹夜したりすることも時々ありますが、 充実した日々を送っております。



高田 安章
1988年物理学科卒業
日立製作所中央研究所研究員
  • 環境汚染物質の分析のための新しい方法の探索
  • 「プールに1滴」という極低濃度の物質の検出、そしてさらにこの限界を超える新しい分析方法の探索、 これが現在の研究テーマです。分析や計測というと化学に属すると思われるかもしれません。 しかし、実際には物理学を初めとしたさまざまな自然科学の知識を総動員して、 目的とする情報を引き出していきます。例えば極微量元素を分析するために、 1万度の高温プラズマを発生させるという「物理的な」方法がとられます。人間と環境との関わりが明るくなるにつれ、環境問題は人類の存亡に関わる課題として 重要視されるようになりました。人間と環境が共生していける社会システムの構築のためには、 価値観やライフスタイルの修正が求められています。まさに人類の知恵と勇気が試される段階に 入っています。自分自身を守るため、次の世代を守るため、環境の番人たる 分析屋の出番は増えています。



佐々木 重雄
1985年物理学科卒業
岐阜大学工学部助教授
修士論文「高圧下におけるBaTiOの弾性的性質に関する研究」
  • 高圧力の世界
  • 我々の身近に存在する物質の一つに「水」は、大気圧の下、0℃で氷になることは 皆さんご存知でしょう。この氷は水に浮き、その結晶の形は六角形をしています。ところが、 この水に室温で1万気圧(1GPa)もの圧力を加えると八面体の氷の結晶ができます。 この結晶は氷VI相と呼ばれる水に沈む暖かい氷なのです。 水は、この他にも温度・圧力の環境を変えると10種類以上もの結晶構造が存在することが 確認されています。また、最近話題になっている高圧力による物理現象として、 酸素の金属化・超伝導現象があります。透明な気体の酸素は約100万気圧(100GPa) まで加圧すると、驚くべきことに分子解離現象を経て電気伝導性をもつ金属になり、 更に0.6Kまで温度を下げると超伝導現象を呈します。このように高圧力は、 大気圧の世界に住む我々が経験できない様々な興味深い物理現象を目の当りにしてくれます。 いま、私共は高圧力によって分子性物質に関する未知の現象を創出し、 光(吸収・散乱現象)を利用してその基礎物性を調べています。未知の物理現象を発見し、 それを解明することは、物理学の基本的な面白さの一つだと思います。 皆さんもこのような世界を楽しんでみませんか。



平山 尚美
1981年物理学科卒業
  • 太陽系のルーツを求めて野辺山そしてマウナケア
  • 「天文学やってます」と言うと「星見てるんですか?」と聞かれることが多い。 「実は暗黒星雲といって星のあまり見えないところを観察しています」と答えると、 ケゲンそうな顔をされる。実は、この暗黒星雲(正体は星と星の間に漂うガスと塵の雲、 これが背景の星の光を遮るために「黒く」見える。オリオン座の馬頭星雲が有名)こそが夜空を彩る 星達の生まれ故郷、わが太陽系にとってもいわばふる里。一見何の変哲もない暗黒星雲を観察することは、 実は太陽系ルーツを探ることでもあるのだ。暗黒星雲は、目で見えるような光は放たないが、 ミリ波とよばれる波長2-3ミリの電波では「光って」いる。 この電波を長野県野辺山にある直径45mの巨大な電波望遠鏡で観察してやると、「星の卵」と言うべき 濃いガスの塊や若い星をとりまくガス円盤、誕生間もない星から吹き出す激しいジェットなどが 続々と「見えて」きて、なかなか賑やかだ。そしてそこには、太陽系誕生の時のドラマの一端を かいま見ることができる。太陽系のルーツの研究には、赤外線やサプミリ波(波長数百ミクロンから1ミリ程度の電波) での観測も欠かせない。しかし、サプミリ波の観測は、湿度の高い日本では難しい。 そこで、ハワイ島マウナケア山頂(海抜4200m)まではるばる出かけて行った時の写真が これ(向かって左から2人目が筆者)。マウナケア山頂には各国の光学・赤外・サプミリの望遠鏡が ひしめいている。日本が現在建設している光学・赤外線の望遠鏡「すばる」 (写真の一番左の円筒型のドーム)も、まもなく観察を開始する。 この冊子を手にし理学部に進学した人と、いつの日か山頂の観測所で めぐりあうこともあるかも知れない。