2009年4月14日
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理学部同窓会会長 浅 野 安 人


創立六十周年を迎えて

 静岡大学は、今年の五月三十一日に創立六十周年を迎えます。創立一期目の一年生は、旧制静岡高等学校・浜松工業専門学校・静岡第一師範学校・静岡第二師範学校・静岡青年師範学校の最後の新入生として学生生活に入り、静岡大学文理学部・工学部・教育学部・農学部の第一期生として卒業しました。その十六年後に、団塊の世代の入学の時期を控えて、文理学部の改組が実施され、理学部が大岩本町に設置されました。今の大谷・片山に理学部が移転したのは、それから三年後の一九六八年秋です。建設されてから四十年経った理学部A棟の耐震工事が実施されたのは、皆さんご承知の通りです。
 昨年ノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎氏が「対称性の自発的破れ」を提唱した一九六〇年は、日本では、石油化学工業の盛んな四日市で喘息・気管支炎の患者が急増して、ようやく公害問題が論議され始め、又、日米安全保障新条約が締結されて六十年安保紛争のただ中で世の中が騒然としていました。一方外国に目を向けると、フランスが初の原爆実験を行い、南ベトナム民族解放戦線が結成されるなど、東西の対立の兆候が出始めた年でした。
 昨年ノーベル化学賞を受賞した下村脩氏が「オワンクラゲの発光にかかわる2つのタンパク質」を発見した一九六一年は、米国がアポロ有人月着陸計画発表する一方で、ソ・朝及び中・朝友好協力相互援助条約の署名、ベルリンの壁が構築されるなど、東西冷戦の幕開けともなった年でもありました。
 同じく昨年ノーベル物理学賞を受賞した益川俊英氏・小林誠氏が標準モデルでCP対称性の破れを無理なく説明する「小林・益川理論」を提唱した一九七三年は、ベトナム和平が成立した年で、日本では、小形電卓が発売され、又、江崎玲於奈氏がノーベル物理学賞を受賞した年でもありました。その三年後にはLSIの開発が始まり、16 bitのマイクロプロセッサ、スーパーコンピュータの国産化、WINDOWSの発売の時代を経て、今日のパソコンの時代になりました。一方、仁科芳雄博士のサイクロトロンに始まった素粒子の研究においても、粒子加速器の大型化が進み、二〇〇二年七月にKEKのBelle(日)とSLACのBaBar(米)によって、「小林・益川理論」が検証され、今や新しい素粒子世界の幕が開かれようとしています。
 今年の「化学と工業」1月号に、科学技術振興機構・有本建男氏の論説「重点4分野の再検討~科学と技術の分離、学際・分野融合、組織の重要性~」が掲載されています。そこに書かれていることと、昨年のノーベル物理学賞・化学賞の受賞内容にもみられるように、効率を重視し、目先の利益や第三者の評価基準などに振り回されてきた昨今、基礎的な科学の研究成果に、陽の目が当たるのは、まさに時宜を得たものといえます。
 創立六十周年を迎え、静岡大学1期生の方々もいまや喜寿を迎えています。静岡大学理学部同窓会としましても、これを期に、さらに組織・体制を充実させて母校理学の発展とともに歩んでいきたいと考えております。同窓会の皆様方のなお一層のご尽力とご支援をお願いいたします。

平成21年3月25日